
9月16日、シンガポール政府はガーナ、ペルー、パラグアイの4つの自然由来プロジェクトから総計217万5000トン分の高品質なカーボンクレジットを調達すると発表した。契約額は約7600万シンガポールドル(約84億円)に上り、2026年から2030年にかけて同国の温室効果ガス削減目標達成に活用される。
同国はパリ協定の下で掲げた「2030年までに排出量を約6000万トンCO₂換算まで削減し、2050年に実質ゼロを実現する」との国家目標に沿って、炭素税導入や再生可能エネルギー導入促進など多様な対策を実施してきた。しかし国土や資源の制約から完全な国内削減には限界がある。そこで国際ルール「パリ協定第6条」に基づくカーボンクレジットの調達を補完策として積極活用している。
今回選定された4事業は、
- ペルー:「コーウェン・アンタミREDD+」および「トゥゲザー・フォー・フォレストREDD+」による森林保全
- パラグアイ:「ブーミトラ草原修復事業」による家畜放牧地の持続的利用と土壌炭素固定
- ガーナ:「クワフ景観修復事業」による5.1万ヘクタールの劣化地再生・植林である。いずれも森林破壊防止や二酸化炭素の吸収量増加を通じて現地の環境改善と住民支援の両立を目指す。
これらの事業は、シンガポールが既に締結した実施協定(IA)に基づき、各国政府から公式承認を受けて展開される。認証には「ヴェラ認証炭素基準(VCS)」など国際的に信頼された手法が用いられる予定だ。
シンガポール政府は今後も第6条適合案件の調達を拡大するとともに、150社以上が進出している国内のカーボンサービス産業の振興も図る。今回の契約は、同国がグリーン成長戦略と国際的な脱炭素市場のハブを目指す上で重要な一歩となる。