
6月5日、インド証券取引委員会(SEBI)は、持続可能な金融の促進を目的に、「グリーン債」以外のESG(環境・社会・ガバナンス)債券の発行に関する包括的なフレームワークを策定した。これにより、インド国内における持続可能な投資機会の拡大と、発行体の多様化が後押しされる見込みである。
この新たなガイドラインでは、ESG債券を「資金使途が環境・社会・ガバナンスのいずれかに明確に関連する債券」と定義し、ESGテーマごとに「ブルー(海洋)」「オレンジ(社会的事業)」「イエロー(再生可能エネルギー)」「トランジション(脱炭素)」などのラベル付けを推奨している。また、各債券発行に際しては、ESG目標との整合性や、資金使途、プロジェクトの選定基準などを記載した「ESG債フレームワーク」の作成が求められる。
さらに、投資家保護の観点から、ESG債券発行体には第三者による独立評価(Second Party Opinion, SPO)の取得が義務付けられる。これは、資金の使途やESG整合性が適切であるかを第三者が確認することで、透明性と信頼性を担保するための措置である。SEBIはこのSPOに関し、ESG専門性を備えた格付け機関や国際的な認証団体による評価を推奨している。
また、報告義務として、発行体は年次でインパクトレポートを提出し、実際の資金使途やプロジェクトのESG成果を定量的かつ定性的に開示することが求められる。これにより、投資家はESG債の社会的・環境的効果を評価可能となる。
今回の新制度は、インド政府のネットゼロ目標や社会的包摂政策とも整合的であり、インドにおけるサステナブル・ファイナンスの主軸として、グリーン債に加えて多様なESG債の市場形成を促す布石となる。