GPIF、企業から見たESG対話の現状と課題を公表 「ボックスティッキング」の懸念も浮き彫りに

4月30日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、2024年5月に実施した「第9回機関投資家のスチュワードシップ活動に関するアンケート」の回答企業のうち、協力を得た33社に対して行ったインタビュー結果を「企業インタビュー(結果概要)」として公表した。今回の調査では、企業のIR担当者らから、機関投資家とのESGを中心とした対話に関する評価と課題が多数寄せられた。
企業側の評価としては、投資家との対話がESG関連の情報開示や社内施策の改善につながっているとの声がある。ESGレーティング向上や、非財務情報と財務情報の統合分析、CO₂削減効果の定量化などが実例として挙げられた。また、サステナビリティと企業価値を結びつける「ストーリー」の必要性を投資家から指摘され、前向きな気づきになったという意見も見られた。
一方で課題として、形骸化した「ボックスティッキング(チェックリスト的な確認作業)」に終始する対話への懸念が複数の企業から示された。企業側が提供済みの情報を再度求められるケースや、ESGと利益のバランスに対する理解不足、さらにはサステナビリティ情報が投資判断にどう活用されているかが不透明であるとの指摘もあった。また、同一の運用会社内でESGと株式運用の担当者が異なる見解を持つことで、企業側が混乱するケースも報告されている。
GPIFは、こうした企業からのフィードバックを今後の運用受託機関との対話やスチュワードシップ活動の改善に活用する考えを示しており、本結果の公開が企業と投資家双方にとっての対話の質向上につながることを期待している。