1月12日、世界経済フォーラム(WEF)は新しい報告書「Securing the Energy Transition」を発表した。本報告書は、安全性と弾力性を転換期のエネルギーシステムの基幹とするための戦略的計画と、エネルギー危機に対処するための現在の介入と長期的なエネルギー転換目標を整合させるための10のアクションを提供する包括的枠組みを提案するものである。
移行期のエネルギーシステムは、エネルギー市場の変化や、分散化、デジタル化、脱炭素化、分散型エネルギー供給の増加による機会とリスクに直面しており、そのため、新たな状況におけるエネルギー安全保障の再評価が必要である。本報告書は、国や政策立案者が戦略的行動、政策、規制を計画する際の指針となる、安全なエネルギーシステムのための包括的なフレームワークを提案している。
エネルギー危機の短期的な影響は、即時の介入を必要とするが、これらの対応は、安全で持続可能なエネルギーの未来に向けた進展を加速させる貴重な機会を提供するものである。
本報告書では、4つの主要テーマの下に整理された10の緊急行動を提案している。
供給の強化
- 再生可能エネルギーによる供給を優先し、化石燃料の補強は約束された排出削減目標に抑制する。IEAは、化石燃料の新規生産に使われる1ドルに対して、再生可能エネルギーへの投資を5ドルとすることを推奨している。
- 多様なエネルギーと貿易のマトリックスを提唱する。少数のエネルギー供給業者に過度に集中することが、現在のエネルギー危機の主な原因である。
- 炭化水素のサプライチェーンから漏れるメタンに対処する。天然ガスが燃焼前に3.4%以上漏れると、気候上の利点は石炭と変わらないが、6%以上の漏出率を持つフィールドもある。
需要管理
- 需要の緩和と脱炭素化のために電化とエネルギー効率を最大化する。短期的にガス価格が高騰すれば、効率化投資や産業・家庭暖房の電化の経済性が向上する。
- 責任あるエネルギー消費に向けて社会行動を誘導する。世界的に見て、上位 10%の世帯は下位10%の世帯の約20倍のエネルギーを消費しているが、的を絞った公的情報とインセンティブにより、上位の消費者に効率化を促すことができる。
財政措置と投資
- クリーンエネルギー投資のギャップを埋めるために、エネルギー市場の余剰利益を活用する。ネット・ゼロに到達するためには、クリーンエネルギーへの投資を大幅に増やす必要がある。エネルギー市場の一部で実現した4兆円とも言われる超過利潤を活用することによっても達成可能であり、早急に展開する必要がある。
- 市場シグナルに干渉することなく、財政措置で脆弱な消費者をターゲットにする – エネルギー価格を改善するための政府のインセンティブや補助金は、市場シグナルを歪めることを避け、よりターゲットを絞り、民間部門による継続的投資と効率的消費を動機付けるべきである。
- エネルギー供給とインフラへの投資家に信頼できるシグナルを提供する – 政策立案者が、低炭素電源の加速と並行してガス需要の見通しについて明確な指針を示すことが必要である。
調整と長期戦略
- 効率を最大化しコストを最小化するために、地域の同業者と協調する。例えば、過剰設備と座礁資産を防ぐために、共同調達と新しいLNG輸入設備の設置を協調して行う。
- この危機は、各国がエネルギー安全保障へのアプローチを包括的に再設計する機会を提供する。
自国のエネルギー安全保障を確保する第一義的な責任は政府にあるが、この危機に持続的に対処するには、政府、企業、国際機関、個人消費者が異例のレベルで関与し、協力することが必要である。
【参照ページ】
(原文)Energy Crisis Offers Opportunity to Embrace New Solutions that Advance a Secure, Sustainable, and Inclusive Energy Transition
(日本語参考訳)世界経済フォーラム、世界的なエネルギー危機に対処するため報告書を発表