豪、サステナブル金融分類法を公表

6月17日、オーストラリアのサステナブル金融研究所(ASFI)は、グリーン投資の対象となる経済活動を明確に分類するための指針「豪州サステナブル金融分類法(タクソノミー)」を公表した。国のネットゼロ目標達成に向け、国内外からの投資を呼び込むための「共通言語」を確立する歴史的な一歩となる。

同分類法は、パリ協定に整合した官民の資金をグリーン分野や移行(トランジション)分野に振り向けるための自主的な枠組み。金融機関や企業は、経済活動が環境に配慮しているかを評価し、自信を持ってネットゼロに貢献するプロジェクトに投資するための信頼性の高い基準として利用できる。

ASFIのクリスティ・グラハム最高経営責任者(CEO)は「分類法の公表は、豪州のサステナブル金融市場にとって画期的な瞬間だ」と意義を強調した。開発には20カ月を要し、独立した専門家組織が主導。財務省や金融規制当局の監督のもと、金融、産業界、市民社会から広範な意見を取り入れたという。

特徴的なのは、国際的な信頼性と国内の特殊性を両立させた点だ。世界で初めて鉱物や鉱業、金属分野を含んだほか、先住民との対話や文化遺産管理への配慮も盛り込んでいる。

今後、ASFIは大手金融機関と共に、実用性を検証するパイロットプログラムを開始する。参加機関にはANZ銀行、豪州国民銀行(NAB)、ウエストパック銀行などの主要銀行のほか、クリーンエネルギーファイナンス公社(CEFC)、大手年金基金のHESTAやRestなどが名を連ねる。数カ月にわたる試験運用を通じて、市場向けのガイダンス作成や分類法の改良に役立てる方針だ。

国際的な連携も進む。サステナブル金融基準の世界的リーダーであるクライメート・ボンズ・イニシアチブ(CBI)は、同分類法の基準を自社の債券認証スキームに組み込むと発表。CBIのショーン・キドニーCEOは「豪州の分類法は未来への投資の買い物リストだ。これにより投資家の信頼はさらに高まるだろう」とコメントした。

(原文)Australia launches its sustainable finance taxonomy: a major milestone for green investment
(日本語参考訳)オーストラリアが持続可能な金融タクソノミーを発表:グリーン投資にとって大きな節目

関連記事

おすすめ記事

  1. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    2025-8-6

    【新着】ESRS改訂の全体像と今後への示唆ートピック別の変更点の整理ー

    ※本記事は、2025年7月31日時点の情報を元に作成しています。今後の動向により内容は随時更新され…

ピックアップ記事

  1. 2025-10-8

    欧州委員会、サステナビリティ報告関連法規(第三国ESRS)の制定を延期へ

    10月6日、欧州委員会は金融サービス分野における115の「重要ではない2次法(regulatory…
  2. SASBスタンダード対照表の作成ステップ(開示項目一覧表ダウンロード資料付)

    2025-10-7

    SASBスタンダード対照表の作成ステップ(開示項目一覧表ダウンロード資料付)

    サステナビリティ情報開示の質を高めることは、今や重要な経営課題である。単なる開示義務の遵守ではなく…
  3. 2025-10-7

    投資家が注目する「気候対応」クライメイトウィーク2025が示した新潮流

    9月21日から28日まで国連総会と並行して開催されたクライメイトウィークNYC 2025は過去最大…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る