FAO、マングローブの土地利用に関する報告書を発表。消失率は鈍化

7月26日、国連食糧農業機関(FAO)は、マングローブの土地利用に関して分析した世界初の報告書「The World’s Mangroves, 2000–2020」を発表した。本報告書は、コロンビアのカルタヘナで開催される第6回国際マングローブ生態系管理会議で、FAOとユネスコが共同で開催する「マングローブ生態系保全のための国際デー」で正式に発表された。

2020年の世界のマングローブ総面積は1,480万ha。世界123カ国の海岸線に生息するマングローブの20%以上が、過去40年間で世界的に失われたと推定されており、その主な原因は人間の活動と自然の後退の両方にあるとした。しかし、2000年から2020年の間に677,000haのマングローブが失われたものの、その割合は2年目の10年間でほぼ4分の1(23%)に減少したという。

また、マングローブは他の森林とは異なり、チャンスがあれば急速に広がる可能性があることも明らかになった。2000年にはマングローブが存在しなかった地域に、新たに約39万3,000ha(サッカー場55万面分)のマングローブが生い茂り、過去20年間の世界的な減少の半分以上を相殺した。

世界のマングローブ林のほぼ半分を抱えるアジアでは、この20年間でマングローブ消失が54%減少した。アフリカでも消失に歯止めがかかり、北中米では2010年から2020年の間に逆転してマングローブ面積の純増を記録した。しかし、同時期に南米とオセアニアでは消失の増加が報告されている。

世界のマングローブについて、FAOは、リモートセンシング衛星画像と地元の専門家の知識を組み合わせ、マングローブ損失の要因など、20年間にわたる5つの地域のデータを収集・分析。ほとんどの水産養殖はマングローブに影響を与えないが、マングローブ減少の主な原因のひとつである池でのエビ養殖は、2000年から2010年の間に全喪失の31%を引き起こしていたものが、2010年から2020年の間には21%に減少したという。

自然消失はマングローブ減少の2番目に重要な要因であり、20年間で26%の減少を引き起こした。

自然災害による損失は、20年間で全体の2%に過ぎなかった。しかし、自然災害によって破壊された面積は3倍に増加し、さらに悪化することが予想され、沿岸地域社会は高潮、洪水、津波に対してさらに脆弱になると報告書は警告している。

マングローブ林の面積増加の要因としては、20年間で増加したマングローブのうち、自然拡大が82%を占め、残りの18%が保全活動であった。

本書では、農業開発によって残存するマングローブを保全し、その持続可能な利用と沿岸地域社会の生活支援を促進することも提言している。またマングローブは、「国連生態系回復の10年」(2021-2030年)を活用し、マングローブ林が適切な生息地に自然に群生できるような条件を整えることに重点を置くべきであるとした。

【参照ページ】
(原文)Global effort to safeguard mangroves steps up
(日本語訳)FAO、マングローブの土地利用に関する報告書を発表。消失率は鈍化

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