フロリダ州、ISS・Glass Lewis を提訴 「ESG 推進で投資家を欺いた」と主張

11月20日、フロリダ州司法長官室は米議決権助言大手のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)とグラス・ルイス(Glass Lewis)の2社を相手取り、州消費者保護法および州反トラスト法違反で訴訟を提起した(フロリダ州湾岸郡巡回裁判所)。公開された訴状によれば、両社が市場支配力を背景に「ESG(環境・社会・企業統治)」に関する独自の思想を企業に押しつけ、フロリダ州民――特に州職員退職年金制度の加入者――に不利益を与えたと主張している。

訴状では、ISS と Glass Lewis が米国の議決権助言市場の「最大97%」を握る寡占状態にあり、その影響力が数百万の株主や年金加入者に及ぶ点を強調する(1〜2ページ)。フロリダ州は両社が「性別クオータ」「人種的クオータ」「気候変動対策の採用強要」など、物議を醸すESG基準を企業に対して事実上義務づけていると指摘している。

州側は、両社が「株主価値の最大化を目的とする」と顧客に説明しながら、実際には「政治的・イデオロギー的目的を優先した」と主張。たとえば性別・人種クオータを満たさない企業の取締役に反対票を推奨するなどの行為は、企業の財務価値向上とは無関係かつ場合によっては違法性があると訴える。

さらに訴状は、ISS と Glass Lewis が ESG を組み込んだ同質的な助言サービスを提供することで競争を事実上排除し、反トラスト法(542.18条)に違反したと指摘。両社が国際的なESG関連団体への加盟や政策調和を通じて「ロックステップ(歩調の一致)」で行動し、非ESG型サービスの提供を避けたと主張している。

フロリダ州公務員の年金を運用する「Florida Retirement System」は24年時点で24兆円規模の資産を有し、ISS と Glass Lewis の投票助言サービスの影響を大きく受けてきた(18〜20ページ)。州は両社の助言が「年金加入者にとって実害をもたらした可能性がある」として、差止命令、民事制裁金、三倍損害賠償などを求めている。

ESGに対して保守州を中心に反発が広がる中、議決権助言大手に対する訴訟は全米的にも注目される。今回の提訴は、企業統治と投資判断におけるESGの位置づけを巡る政治的・法的対立の新たな局面となりそうだ。

(原文)IN THE CIRCUIT COURT OF THE FOURTEENTH JUDICIAL CIRCUIT IN AND FOR GULF COUNTY, FLORIDA

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