
10月30日、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は、ロンドンで開催された「IFRSサステナビリティ・シンポジウム」において、同基準を各国で共通に活用するための「グローバル・パスポート」構想を発表した。今回の会合には45を超える国・地域から代表者が参加し、ISSB基準の実務導入や各国制度との調和をめぐる議論が行われた。
基調講演でISSB議長のEmmanuel Faber氏は、規制当局間の多国間対話を促進するため、「Jurisdictional Working Group(JWG)」の拡大を発表した。この新たな枠組みは、ISSB基準を「グローバル・パスポート」として機能させ、各国が自国の条件に合わせつつも、ISSBが発行した基準に準拠した開示報告を相互に受け入れる仕組みの構築を目指すものである。
ISSBは、各国が独自のサステナビリティ開示要件を導入する中で懸念される「開示の断片化」への対応を重視している。Faber氏は、ISSB基準の相互承認が実現すれば、企業にとって開示コストの削減や手続きの効率化につながり、投資家にとっても比較可能で信頼性の高い情報の入手が容易になると強調した。
現在、約40の国・地域がISSB基準の採用または活用を検討しており、この動きを受けてISSBは「JWG」を新設。各国の制度運用やパスポート制度に関する実務的な協議を支援する。さらに、各国がISSB基準を導入する意義を整理した「Jurisdictional Rationale Guide」と、その活用を支援する新ツールも発表された。
このガイドでは、ISSB基準採用の目的として、資本市場の透明性向上、投資判断の質的向上、開示作業の効率化などが挙げられている。ISSBは今後、各国当局との協調を通じて、持続可能な資本市場の国際的整合性を一層高めていく方針である。















