
7月28日、米フロリダ州のジェームズ・ウスマイヤー司法長官は28日、企業の環境情報開示を促す国際的な非営利団体「CDP」と、科学的根拠に基づく目標設定を認証する「SBTi」に対し、州の消費者保護法および反トラスト法(独占禁止法)に違反した疑いで調査を開始したと発表した。
今回の調査は、米国の一部で強まっているESG(環境・社会・ガバナンス)投資への反発を象徴する動きと言える。
司法長官事務所によると、両団体は「環境透明性」を名目に、企業に対して独自データの開示やアクセス料の支払いを不当に強要している疑いがあるという。ウスマイヤー司法長官は声明で、「過激な気候活動家がコーポレートガバナンスを乗っ取り、自由市場に対して武器化している」と厳しく批判。「我々は『気候カルテル』が企業を搾取し、消費者を誤解させるのを止めるため、法のあらゆる手段を用いる」と述べた。
調査の対象となったCDPは、企業の気候変動対策に関する情報を収集・評価する世界最大級のプラットフォーム。そのスコアは、ブルームバーグやS&Pグローバルといった大手金融機関が投資判断に利用しているとされる。SBTiは、CDPや国連グローバル・コンパクトなどが共同で設立し、企業の温室効果ガス削減目標が科学的根拠に基づいているかを認定している。
司法長官事務所が問題視しているのは主に以下の2点だ。
- 欺瞞的商行為(消費者保護法違反)の可能性:
- 良いスコアや好意的な評価を得るためのサービスを企業に販売している。
- 投資家が利用する環境データの客観性を偽っている。
- 反競争的行為(反トラスト法違反)の可能性:
- CDP、金融機関、投資サービス会社間の連携が、違法な市場操作にあたる疑い。
- 情報開示に参加しない企業に圧力をかける行為が、公正な競争を妨げている疑い。
司法長官事務所は、SBTiが認証した目標の進捗報告のためにCDPの利用を促す仕組みが、「利益主導のフィードバックループ」を形成していると指摘している。
フロリダ州をはじめとする共和党主導の州では近年、企業の経営方針にESGの観点を過度に反映させることが自由な市場経済を歪めるとして、「反ESG」の動きが活発化している。今回の調査は、こうした政治的背景の中で行われたものであり、企業のサステナビリティ活動や情報開示のあり方を巡る議論に一石を投じる可能性がある。
(原文)Attorney General James Uthmeier Launches Investigation into Climate Cartel for Potential Consumer Protection and Antitrust Violations
(日本語参考訳)ジェームズ・ウスマイヤー司法長官、消費者保護と独占禁止法違反の可能性を理由に気候カルテルの捜査を開始