
7月11日、欧州中央銀行(ECB)の理事で監督理事会副議長のフランク・エルダーソン氏は、欧州の銀行が気候変動および自然関連リスク(C&Eリスク)の管理体制を大きく前進させていると報告した。一方で、リスク管理の適用が限定的な領域にとどまっている現状を指摘し、さらなる包括的な対応の必要性を強調した。
ECBによると、2022年時点では先進的な実務を導入していた銀行は3%に過ぎなかったが、2024年末にはその割合が56%に達した。銀行は気候リスクを自己資本十分性評価(ICAAP)やストレステストに組み込むよう求められ、現在ではすべての銀行が気候リスクをストレステストに反映させている。
しかし、全体の75%の銀行は依然としてすべてのリスク要因をICAAPに網羅しておらず、自然関連リスクについてのストレステスト導入も不十分とされた。また、住宅ローンや市場リスクなど特定分野への対応の遅れが見られ、リスクの過小評価につながる恐れがある。
ECBは、2026年から施行される気候移行計画への対応に向け、移行戦略の段階的評価を開始予定であり、年内に良好事例集を公表する方針だ。また、10月1日には業界向け会議を開催し、各銀行の進捗や課題を共有する予定である。
気候危機の深刻化に伴い、自然災害による損失や経済影響の見積もりは年々上方修正されており、信頼性あるデータと現実的な対応が金融安定に不可欠とされる。
(原文)Banks have made good progress in managing climate and nature risks – and must continue
(日本語参考訳)銀行は気候と自然リスクの管理において大きな進歩を遂げており、今後も継続する必要がある。