10月17日、グローバル・プロフェッショナル・サービス企業PwCのは新レポートを発表した。本レポートによると、ベンチャーキャピタルとプライベート・エクイティによる気候変動技術ベンチャーへの投資は、2023年に急減したが、経済的・地政学的混乱の影響を受け続ける市場全体を上回るパフォーマンスを維持した。また、気候変動関連技術の新興企業への投資家層が広がり、より排出削減効果の高い技術への資金調達にシフトしていることが示された。
PwCは、本レポートの基礎データセットとして気候テック投資インデックスを使用し、過去10年間に8,000社以上の気候テック新興企業、4,900億ドル(約73兆円)以上に相当する32,000件以上のディールを分析した。
PwCの報告書は、2023年の気候変動関連技術のプライベート・マーケットからの資金調達は40.5%減少しているが、地政学的混乱、バリュエーションの低下、インフレと金利の上昇の影響を受ける中、ベンチャー・キャピタルとプライベート・エクイティからの資金調達全体が50%以上減少しているのに比べれば、鈍化はそれほど急激ではないと指摘。気候変動関連技術は4年連続でシェアを拡大し、2023年には投資全体の10%に達し、直近四半期では11.4%を超えた。
報告書では、気候変動技術投資市場が成熟し、主流になりつつあることを示す、いくつかの重要な傾向も明らかになった。本調査で明らかになった最も興味深い動向のひとつは、資金調達の流れと排出削減の可能性との整合性が高まっていることである。例えば、他のどのセクターよりも排出量に占める割合が高い産業部門からの排出量を削減するソリューションをターゲットとする新興企業への投資が大幅にシフトしている。この分野への投資の割合は、長期平均が8%未満であったのに対し、2022年第4四半期から2023年第3四半期の間に14%まで上昇していることが報告書から判明した。逆に、排出量に占める割合が相対的に小さいモビリティ部門は、依然として最大の投資シェアを集めているが、そのシェアは半分以下に低下し、長期平均の50%から45%に減少した。
同様に、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)、グリーン水素、代替食品など、排出削減ポテンシャルの高い技術に向けられる資金の割合が増加し、小型バッテリーEVや風力・太陽光発電など、排出削減ポテンシャルの低い技術に向けられる割合は減少(それでも高い)していることがわかった。
CCUSテクノロジーは、まだ市場のごく一部を占めるに過ぎないが、企業が炭素除去クレジットの購入を表明し、米国のインフレ削減法や超党派インフラ法のような政府の優遇措置が登場したため、過去2年間で投資額が絶対的に増加した唯一の気候変動技術カテゴリーとして浮上し、特に力強さを示した。
報告書で強調された重要な傾向の一つは、気候変動技術への資金調達が、初期段階の案件から中期段階の案件へとシフトしていることである。アーリーステージ案件は、2023年に初めて気候変動関連技術案件全体の半分以下になり、ミッドステージ案件は45%以上に達し、4年前の約4分の1から上昇した。PwCによると、アーリーステージ案件の減少は、技術の拡張性に対する懸念や、新興企業が低評価での資金調達に消極的であることが背景にあると投資家は述べている。
また、同レポートは、気候変動技術への投資が主流になりつつあることを示唆しており、初めて市場に参加する投資家の割合が増加し、ベテラン投資家(5件以上の気候変動技術案件に投資したことのある投資家)の割合が減少している。
【参照ページ】
(原文)How can the world reverse the fall in climate tech investment?
(日本語参考訳)PwC報告書:気候変動関連技術への投資は減少、しかしVCとPEからの資金調達に占める割合は過去最高を記録