気候変動・人権など世界には多様な認証制度が存在!サステナビリティに関する主な認証ラベル・制度:Part2
- 2022/1/24
- コラム・レポート
- ESG, サステナビリティ, サステナビリティ認証
こんにちは!ESG Journal Japan編集部です!
サステナブルな事業やESG・SDGsを推進するにあたって、自社のサステナビリティをいかに客観的に測定し評価するか、という点が今非常に大事になってきています。その一つの方法として、サステナビリティやエシカルに関する認証ラベルの取得があります。
先日公開したPart1では認証ラベルの種類・定義や、メジャーな環境ラベルを中心に取り上げましたが、Part2では先日上場した米Allbirdsが取得していることで話題となったB Corp認証や排出量削減を目指すためのSBTi認証など環境(脱炭素・気候変動)・社会(人権)などにより特化したサステナビリティ認証制度を紹介します。
また、Part1のコラムは以下リンクより見ることができますので、まだの方は是非ご覧ください。
今や取得が当たり前?サステナビリティに関する主な認証ラベル・制度:Part1
B Corp認証(B Corporation):環境・社会
B Corp認証は、環境や社会へのパフォーマンス、透明性、説明責任、持続可能性において優れた会社に与えられる認証制度です。米国の非営利団体B Labによって運営され、厳しい評価基準を満たしている営利企業のみが認証を受けることができます。近年、世界的な潮流であるSDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・統治)経営などを実践面から支援する認証制度として知られています。
取得方法としては、B Labが無料で提供するオンライン認証試験「B Impact Assessment(Bインパクト・アセスメント)」を受け、200の質問に回答し、80点以上を獲得する必要があります。他にもB Corp認証を受けるための法的な要件について、企業に関する質問に回答しなければなりません。さらにB Corporationの規定に沿った定款文書をつくり、サインすることも必要です。
この定款文を提出後、B Labから電話でのレビューがあります。これらのプロセスを経て無事に審査が通れば、認証を取得することができます。試験を受けてから、審査が通るまで一連のプロセスに要する期間は6~10か月ほどとなっています。
このB Corp認証ですが、日本語での申請方法が存在せずすべて英語でおこなう必要があります。
認証取得後には、年会費の納入や認証の更新も必要になってきます。年会費に関しては企業の収益に応じた年会費をB Labに納めます。更新については3年ごとに行われ、その際は「B Impact Assessment」を受けて評価を更新しなければなりません。また自社の取り組みに関する「B Impact Report(Bインパクト・レポート)」の提出と公開を求められます。
認証試験が英語であることや、その他手続きの複雑さ等から日本国内においてB Corp認証を取得している企業は、ダノン・ジャパン、泪橋ラボ、日産通信、フリージア、石井造園、シルクウェーブ産業、エコリングの7社に留まります。
Fair For Life(FFL) 認証:環境・人権
Fair For Life認証は、スイスのエコロジー団体(IMO swiss AG、the Swiss Bio Foundation)によって2006年に作られた環境と人権を守るための基準です。2014年にはヨーロッパで有機認証を行うECOCERTに引き継がれ、2016年よりフェアトレードの基準が加わった総合的な認証システムとなりました。その名の通りすべての人に「尊厳のある生活」を求め、生産者と企業・従業員と雇用者・販売者と購入者の間のフェアで良好な関係を確立することを目指しています。
Fair For Life認証には2つの認証区分があります。
1つ目は、For Life 基準です。これは、組織に対して与えられる「企業(法人)の社会責任認証: “Corporate Social Responsibility” certification」です。
2つ目は、Fair for Life 基準です。これは、製品に対して与えられる「公正な貿易と責任ある調達認証: “Fair Trade and Responsible supply-chains” certification」です。
また、以下のように3つの基本原理も設けています。
1. Respect human rights and fair working conditions(人権とフェアな労働条件の遵守)
2. Respect ecosystems and promotion of biodiversity, sustainable agricultural practices(環境と生物多様性、持続可能な農業)
3. Respect and betterment of local impact(地域インパクトの向上と尊重)
フェアトレードに関する認証制度には、製品に対してつけられる国際フェアトレード認証(FLO)と、団体が加盟する世界フェアトレード連盟(WFTO)がありますが、Fair For Life認証は、それらの課題に対応する代替的な社会的認証です。
国際フェアトレード認証(FLO)は、対象となる産物が限られている点が強みでもありネックであるとされています。また国際フェアトレード認証のマークを製品につけるためには、小売価格の1%をフェアトレード機構へ支払わなければなく、販売者の負担にもなっています。
一方でFFL認証は、対象となる生産物・製品に制限を設けておらず、農産品や原料、複数原材料からなる製品、広い範囲の手工芸品など、認証を受けることが可能です。また、FFL認証を受けることで、認証マークを無料でつけることができます。
世界フェアトレード連盟(WFTO)は、WFTOが定める10の指針と約100の基準をクリアした団体が加盟する制度のため、一般の企業が参加することはなく、加盟団体の多くを途上国の生産者が占めています。また、基準の達成度については外部組織による監視がなく、自己申告の努力目標である点が課題です。一方でFFL認証は、組織化していない小規模生産者でもモデルに参加することができるほか、生産に直接携わらない先進国消費地の販売者も加盟することができます。そのため、より多くの生産者・販売者が参加することができます。また、認証の監査は独立した第三者組織によりしっかりと行われます。
取得には以下の6つのステップを踏む必要があります。
1. Application(申請書の提出)
2. Contractual ageement(契約・見積書の提出)
3. Initial evaluation(認証機関による初期審査)
4. Corrective measures(監査)
5. Certification decision(認証書の受領)
6. Continuous surveillance(3年サイクルでの年次評価)
FFL認証は、アフリカや南アフリカ、アジアなどの生産者と、北米やヨーロッパなどのメーカー・販売者が取得しており、同認証を受けた製品はアメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、オランダなどの国々で3,000以上の商品が流通しています。
SBTi認証:温室効果ガス削減
Science Based Targets(SBT)とは、パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑え、1.5℃目標を目指す)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のことを言います。
SBT認証はパリ協定の採択を契機として国連グローバルコンパクトをはじめとする共同イニシアチブが提唱したもので、企業が定めた温室効果ガス削減目標を、長期的な気候変動対策に貢献する科学的に整合した目標(SBT)として認定します。
認証を得るには、企業は毎年温室効果ガスを2.5%以上削減することを目標とし、5年~15年先の⽬標を設定する必要があります。その際、事業者自らが直接排出するものだけでなく、他社から排出されたものを含めたサプライチェーン全体の温室効果ガス(スコープ3)の削減が求められます。SBT認定後も排出量や対策の進捗状況を毎年開示し、定期的に目標の妥当性を確認しなければなりません。
2021年12月現在で認定取得済の企業は世界で1,054社あり、うち⽇本企業は143社となっています。世界的には⾷料品が、⽇本では電気機器、建設業が多くなっています。(参考:SBTに参加している国別企業数 – 環境省)
CBS認証:気候変動
CBS認証(Climate Bonds Standards)とは、英国の国際NGOであるClimate Bonds Initiative (CBI)が策定している基準で、認証プロセス、発行前・発行後要件やセクター別の適格性・ガイダンスが含まれており、「グリーンボンドの環境に対する貢献度についての信頼性や透明性を確保すること」を目的に制定されています。CBIが定める厳しい気候変動基準との適合性が認められるグリーンボンドとグリーンローンのみに付与されるようになっています。
CBS認証では、2020年12月時点で14のセクター別基準が運用されており、当該グリーンボンドが対象とするプロジェクトおよび資産の適格性の判断において、下記に該当する14のセクターにおいてセクター別基準を満たしている必要があります。
〈14のセクター別基準〉
農業 、施設園芸農業、バイオエネルギー 、低炭素ビル 、森林、地熱発電、土地保全・復旧、低炭素な陸上輸送、海洋再生可能エネルギー、太陽光発電
海上輸送、風力発電、廃棄物管理、水インフラ
CBS認証を取得するには、当該グリーンボンドが気候ボンド基準(セクター別基準)を満たしていることについて、気候ボンド基準委員会から承認された認証機関のレビューを受ける必要があります。そして認証機関のレビュー結果をもとに、CBS認証委員会がCBS認証の付与を行います。
Cool Food Meals認証:気候変動
Cool Food Meals認証は、世界資源研究所(WRI)によって作られた消費者が外食する際に気候変動に配慮したメニューを見分けるための新しい認証制度です。各メニューの生産から流通までのサプライチェーン全体を含め1食当たり二酸化炭素排出量を測定していることが保証されるので、消費者は、栄養価の高い食品を選ぶのと同じように、気候変動への影響を考慮して、何を食べるかを決めることができます。
「Cool Food Meals」認証は、通常の1食あたりの二酸化炭素排出量の閾値を下回ることに加え、栄養面の条件も満たすと付与されます。WRIでは、1食あたりの二酸化炭素排出量は25%削減を推奨しています。付与されたメニューに対しては「Cool Food Meals」マークを付けることができるようになります。
以下記事で取り上げているPanera Breadは、Cool Food Mealsの認証を受けたメニューを提供する最初の企業です。Panera Breaはデジタルメニュー全体にCool Food Mealsの表示を行い、バッジはウェブサイトとモバイルアプリに表示されています。
Panera Bread、食品製造の排出量を目標とし、排出量以上の炭素除去にコミット
4パーミル・イニシアチブ農産特等認証制度:脱炭素
「4パーミル・イニシアティブ」とは2015年にパリ協定を締結したCOP21を開催したフランスの提唱により広がった国際活動であり、2020年12月時点で日本を含む566の国や国際機関が参画しています。日本の地方自治体では2020年4月に山梨県が初めて参加しました。これは、世界の土壌表層の炭素量を年間4パーミル(0.4%)ずつ増加させれば、経済活動等で増加する大気中の二酸化炭素の増加をネット・ゼロにできるという考え方に基づいています。山梨県は主要農産物である果樹園で発生する剪定枝を炭にして土壌に貯留することや草生栽培による果樹園の下草由来の炭素の蓄積に注目し、全国に先駆けて、この取り組みに着手しています。
山梨県、やまなし4パーミル・イニシアチブ農産物等認証制度の制定
同認証制度は、(1)土壌への炭素貯留量の実績を算定し基準を満たせる圃場、またはその圃場で生産された農産物とその加工品を認証する「実績認証」(アチーブメント認証)と(2)具体的取り組みについて目標を定め、土壌への炭素貯留量が確実に見込まれる計画を認証する「計画認証」(エフォート認証)の2区分があります。
(1)は雑草や堆肥、剪定枝から製造したバイオ炭等により、土壌に年間1.0t/ha以上の炭素を貯留する取り組みであることを基準に実績を審査し認証するものです。また(2)は雑草や堆肥、剪定枝から製造したバイオ炭等の投入により、土壌に炭素を貯留することが確実に見込まれる計画であることを基準に現在の取組状況と3年後の目標を審査し認証する制度となっています。
認証申請対象者は、県内で農産物を生産する個人・法人・農業者団体や、認証制度に基づく農産物を主原料とした加工品の製造者であり、認証されると農産物等に県の認証マークを表示できるようになります。
山梨県は、2021年7月19日に現地のみさき食品に初のアチーブメント認証を付与しました。また、山梨県立北杜高校などがエフォート認証を受けています。
最後に
今回は気候変動や人権に関わる認証制度を取り上げましたがいかがでしたでしょうか。サステナビリティに関する認証制度は数多く存在し、今後もPart3・4と紹介していきたいと思いますので、次回策も楽しみにお待ち頂ければと思います!