
11月3日、証券監督者国際機構(IOSCO)は、「ESGインデックスをベンチマークとして用いる場合に関する最終報告書」を発表した。本報告書は、同機構の「金融ベンチマーク原則(PFB)」と比較しつつ、ESGベンチマークの透明性・整合性・信頼性を高めるための指針を示したものである。
報告書は、ベンチマークの4本柱(ガバナンス、品質と整合性、方法論、アカウンタビリティ)に基づき、ESG特有の課題を明確にしている。特に、ESGデータが非定量的・将来志向的である点を踏まえ、金融ベンチマークと同等の厳格さを適用するには補完的な対応が必要と指摘した。
IOSCOは、ESGベンチマークの拡大に伴い「グリーンウォッシング(見せかけの環境配慮)」のリスクが高まっていると警告した。欧州証券市場監督局(ESMA)の分析を引用し、①ESG要素を伴わない名称の使用、②除外基準のみに基づく「擬似ESG」指標、③社会的指標データの欠落、④Scope 3排出量の不統一などを主な脆弱性として挙げた。
報告書は、ESGベンチマーク運営者に対し次のような改善策を提示している。
- ガバナンス強化
・第三者データ提供者を含む透明な監督体制の確立
・利益相反管理と独立性の確保
・ESG専門知識を持つ委員会による監督 - 品質と整合性
・ESGデータの限界や推計方法の明示
・専門家判断の使用基準を明確化
・頻繁な見直しによる定義・規制の変化への対応 - 方法論の透明化
・データ入力、推定手法、ESG要素の重みづけなどの詳細開示
・第三者データや自社開発メトリクスの検証体制構築
・手法変更時の事前通知と合理的説明 - アカウンタビリティ
・苦情処理や監査の仕組みをESG特有の課題へ対応
・データ追跡性(トレーサビリティ)を確保し、外部検証可能に
・規制当局間の協調枠組みを強化
IOSCOは、PFBはESGベンチマークにも概ね適用可能であるものの、ESG特有の定性的・主観的データを扱うため、比例的な適用と追加的考慮が不可欠であると指摘した。とりわけ、透明性・説明責任・データの品質確保を徹底することが、今後のESG金融市場の信頼性向上に不可欠であるとしている。
(関連お役立ち資料>>>2025年版 ESG主要評価機関の解説 -S&P (CSA), CDP, MSCI, FTSE, Sustainalytics-
















