CSRD/CSDDDのさらなる簡素化、対象企業を大幅縮小

10月13日、欧州議会の法務委員会(JURI)は、CSRD/CSDDD(企業サステナビリティ報告指令/企業サステナビリティ・デューデリジェンス指令)の適用範囲を大幅に縮小し、規制の簡素化を目指す修正案を賛成多数で承認した。今回の動きは、2025年2月に欧州委員会が提案した“オムニバス”規則改正案の一環である。

CSRDの対象企業をさらに削減

当該委員会案では、現行より80%減となる規模縮小を提示していたが、当該修正案ではさらに限定を強め、平均従業員1,000名以上かつ年間純売上高4.5億ユーロ超の企業に絞るとしている。
この基準を下回る企業は報告を任意とし、義務化された基準を超える情報提供をパートナー企業に求めることも制限される。
また、分野別(セクター別)報告義務は任意化され、既存基準そのものを簡略化、定量情報に重点を置く設計としている。なお、すべてのEUの報告義務に関するテンプレート、ガイド情報を提供するデジタル・ワンストップ・ポータルを設立する案も含まれていた。

CSDDDの対象企業

CSDDDにおいては、当該修正案ではより以下の大規模な企業に限定するとしている。

  • EU所属企業:従業員5,000名以上かつ年間売上高15億ユーロ超
  • EU外企業:EU域内での売上が同額を超える場合

義務対応の方式も、すべての取引先に情報を求める“一律型”から、リスクに応じた情報収集を行うリスクベースアプローチに改める案になっている。
また、規則違反による損害賠償責任はEUレベルでは設けられず、各加盟国法制度の下で責任を問う。ただし、最大罰則は全世界売上高の5%とする案が盛り込まれた。

今後について

議会内では、サステナビリティ規制を「企業負担軽減」と「グリーン転換推進」の両立手段として位置づける姿勢が強調された。また、気候移行計画の策定についても依然として重要であることが確認されている。

今後、議会の法務委員会が議決を行った後、全体会議での採択を経て、欧州理事会(加盟国政府)との協議へと進む見通しだ。本会議での承認後、10月下旬以降に議会・加盟国間交渉(トリロジー)が始まり、最終制度が確定する可能性が高い。

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(原文)Sustainability reporting and due diligence: simpler rules for fewer companies
(日本語参考訳)持続可能性報告とデューデリジェンス:より少ない企業のためのよりシンプルなルール

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