フェレロやネスレら、EU森林破壊防止法の再延期に「信頼損なう」と抗議

10月2日、フェレロ、マース、ネスレなど主要な食品・日用品メーカーが、欧州連合(EU)が「森林破壊防止規則(EUDR)」の施行を再び延期するとの報道を受け、連名で抗議声明を発表した。これらの企業は、カカオ、乳製品、ゴム、木材などの一次産品に関わるサプライチェーン上で長期的な投資と準備を進めてきたと強調し、「EUDRの信頼性が揺らげば、持続可能な調達への企業努力が損なわれる」と懸念を示した。

本声明は、EUDRが予定通り2025年末に施行されると信じて準拠体制を整えてきた企業にとって、再延期が大きな経済的・制度的混乱をもたらすと主張している。特に、小規模農家との協働やデジタル追跡技術の導入などを進めてきた企業にとって、制度変更や延期は追加コストを生むだけでなく、「欧州規制に対する信頼」を損なうリスクもあるという。

声明文では、延期理由とされる「技術的ITシステムの不備」についても厳しく言及した。「技術的課題が法制度の根幹を揺るがす口実として使われるべきではない」として、EU執行機関に対し、制度内容の再協議ではなく、現実的な運用方法の検討を早急に進めるよう要請した。また、企業側としては、今後も建設的な対話を継続する用意があるとし、現実的な解決策の模索を呼びかけている。

この問題をめぐっては、すでに市民団体や環境保護団体からもEUの対応を批判する声が上がっており、EU内部でも制度実施に関する意見の対立が表面化している。国際社会からの注目が集まる中、EUDRが計画通り導入されるかどうかは、今後のEUの環境政策全体の信頼性を占う試金石となりそうだ。

(原文)EU: Ferrero, Mars, Nestlé & other companies from across commodities warn against another delay to anti-deforestation law
(日本語参考訳)EU:フェレロ、マース、ネスレなど、様々な産品を扱う企業が、森林破壊防止法のさらなる延期に警告

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