
7月30日、OpenAI CEOのサム・アルトマン氏とソフトバンクのベンチャーキャピタル部門が支援する米スタートアップ企業「ヘリオン・エナジー(Helion Energy)」は、米マイクロソフト(MSFT.O)のデータセンターに電力を供給する計画の核融合発電所「オリオン」の建設を正式に開始した。ヘリオンは2028年までに電力供給を開始することを目指しており、これは民間企業による初の核融合エネルギー商用化への大きな一歩とされる。
建設地であるワシントン州マラガは、コロンビア川沿いの中心部に位置し、周辺には既存の水力発電インフラが整備されている。ヘリオンはロックアイランドダムの送電網を活用することで、マイクロソフトのデータセンターが接続されている同一電力網への統合を計画している。
同社はすでにマイクロソフトと2023年に電力購入契約(PPA)を締結済みである。現在はワシントン州政府による最終許認可取得に向けて手続きを進めており、事業化に向けた準備が本格化している。
核融合技術は、従来の原子核分裂と異なり、原子を高温で衝突させてエネルギーを生み出すプロセスで、温室効果ガスの排出や高レベル放射性廃棄物の発生がない“クリーンエネルギーの究極形”とされている。ただし、現時点では反応の持続や発電量の安定化といった技術的課題が残されており、商用化には多くの挑戦が伴う。
ヘリオンは現在、同州エバレットに設置されたプロトタイプ「ポラリス(Polaris)」で研究を進めており、ここで得られた知見を新施設「オリオン(Orion)」の設計・製造に反映させていく方針だ。
ヘリオンの共同創業者でCEOのデイビッド・キルティリー氏は、「マイクロソフトのデータセンターが接続される上流の送電網に直接つなげる点が、このプロジェクトの大きな強みである」と語った。
一方、マイクロソフトはカーボンフリーの電力源として核融合の可能性に注目しており、持続可能性の取り組みの一環として従来型の原子力発電との契約も結んでいる。同社の最高持続可能性責任者(CSO)メラニー・ナカガワ氏は、「過去数年で核融合関連企業が複数の技術的マイルストーンを達成しており、この10年内に実現する可能性は高まっている」と述べた。
このプロジェクトが順調に進めば、今後10年以内にも核融合エネルギーが実用化へと大きく前進する可能性がある。
(原文)Helion Energy starts construction on nuclear fusion plant to power Microsoft data centers