欧州委員会、中小企業向けに任意の持続可能性報告基準を提示

7月30日、欧州委員会は、中小企業(SME)の情報負担を軽減するための任意の持続可能性報告基準に関する勧告を採択した。これは、企業サスティナビリティ報告指令(CSRD)の適用対象外となる中小企業を支援する措置で、特に金融機関や大企業からの情報要請への対応を円滑にすることを目的としている。

新たに提案されたこの「中小企業向けボランタリー・サステナビリティ報告基準(VSME)」は、欧州委員会の助言機関であるEFRAGによって開発されたもので、あくまで任意適用である。欧州委員会は、大手企業や金融機関に対し、SMEへの情報要請時にVSME基準を活用するよう推奨している。

中小企業が自主的にこの基準に基づいて持続可能性情報を報告すれば、持続可能な資金へのアクセスが改善され、自社の持続可能性パフォーマンスの理解が深まり、レジリエンス(回復力)と競争力の向上が期待される。

この取り組みは、2025年2月に発表された「オムニバス簡素化パッケージ」に基づいている。同パッケージでは、CSRDに基づく強制報告の対象を従業員1,000人を超える大企業に限定することが提案されており、それ以外の企業には今回のような任意基準の採用が推奨されている。

この任意基準は、「バリューチェーンキャップ」の役割も担い、SMEが過剰な情報開示の負担から保護される仕組みとして機能することが期待される。

今回の勧告は、正式な委任規則の採択までの中間措置と位置づけられている。将来的に発表される委任規則の内容は今回の勧告と異なる可能性があり、その採択時期はEU理事会と欧州議会によるオムニバスIの交渉進捗に依存する。

欧州委員会は、持続可能性報告における柔軟性と実用性の両立を図ることで、中小企業の事業継続と競争力強化を後押ししていく方針です。

(原文)Commission presents voluntary sustainability reporting standard to ease burden on SMEs
(日本語参考訳)委員会は、中小企業(SME)の負担を軽減するため、自主的な持続可能性報告基準を提示しました。

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