企業が持続可能な成長を目指す中で、戦略やリスク、機会を効果的に伝えることが問われている。統合報告は、これらの要素を一貫して伝えるための重要なツールであり、特に国際的な開示基準であるISSB基準やCSRDとの関連性が強まっていると考える。今後の企業報告における統合報告書の役割と重要性について、詳細を考察することで、企業が直面する重複開示の課題とその解決策を探っていく。
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統合報告書の背景
統合報告の概念(フレームワーク)は、2000年代初頭から議論されるようになり、2013年に当時の国際統合報告評議会(IIRC)が「国際統合報告フレームワーク」を発表したことで報告書の発行が広まった。このフレームワークは、企業が短期的な業績だけでなく、中長期的な価値創造プロセスをステークホルダーに伝えるための手段として位置づけられた。
また、「統合思考」の概念が各国において議論が熟されたことから、2022年8月には、IIRCとSASBが合併し、2021年6月に設立されたValue Reporting Foundation(VRF)が設立され、IFRS財団に組み込まれている。
各国の情報開示状況
統合報告書や統合思考に関する関心が高まったものの、統合報告書が「制度開示」として求められているケースはあまり多くない。しかし、EUでのCSRDの適用や、ISSB基準の採用により、各国において「非財務情報開示」の制度化は進みつつある。
なお、非財務情報の開示においては、報告媒体の制約がないため、財務報告やアニュアルレポート、サスナビリティレポートを通じて開示されている。各国での情報開示の状況は以下のとおり。
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執筆者紹介
竹内 愛子 (ESG Journal 専属ライター) 大手会計事務所にてサステナビリティ推進や統合報告書作成にかかわるアドバイザリー業務に従事を経て、WEBディレクションや企画・サステナビリティ関連記事の執筆に転身。アジアの国際関係学に関する修士号を取得、タイタマサート大学留学。専門はアジア地域での持続可能な発展に関する開発経済学。 |