欧州委、SFDRを大幅簡素化する改正案を公表

11月20日、欧州委員会は、環境・社会目的を統合した金融商品の透明性枠組みであるサステナブル金融開示規則(SFDR)の改正案を提示した。現行制度が複雑化し、投資家が商品特性を理解しにくいという課題が指摘されてきたことを受け、開示の簡素化と実務への適合性向上を狙うものだ。
委員会のレビューでは、SFDRによる開示文書が長大で比較困難となり、特に個人投資家が環境・社会的特徴を把握しづらい状況が明らかになった。また、SFDRが事実上の「ラベル制度」として利用され、グリーンウォッシュや誤販売のリスクを高め、EUのサステナブル分野への資金供給促進という目的が十分に達成されていないと指摘された。
改正案ではまず、金融市場参加者に課されていた主要な悪影響(PAI)に関する事業者レベルの開示義務を削除する。これは、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)との重複を解消し、実施負担とデータ取得コストを大幅に削減する意図がある。今後、環境・社会への影響を開示するのはCSRDの新基準に該当する大規模事業者に限られる。
加えて、商品レベルの開示は、比較可能で容易に取得でき、かつ意味のある情報に絞り込まれる。商品提供者にとっては設計と表示の明確化につながり、投資家にとっては理解しやすい情報となる。
さらに、ESG主張を行う金融商品を「サステナブル」「トランジション」「ESGベーシック」の三つに分類する新制度を導入する。いずれの分類でも、ポートフォリオの70%以上を該当戦略に沿う投資で構成し、有害産業(人権侵害企業、タバコ、禁止兵器、一定基準以上の化石燃料など)を排除することが求められる。マーケティング文書や商品名でESGを掲げられるのは、これらのカテゴリーに該当する商品のみとなる。
この提案は、欧州議会と理事会に付され、今後審議が進められる。
(原文)Commission simplifies transparency rules for sustainable financial products
(日本語参考訳)欧州委員会、持続可能な金融商品の透明性規則を簡素化

