
7月31日、米IT大手のMeta(メタ)は世界中で増設するデータセンターの建設に「マス・ティンバー」と呼ばれる大規模木材を試験的に採用したと発表した。従来の鉄骨やコンクリートに代わる建材として活用することで、建設工程での二酸化炭素(CO₂)排出量(エンボディド・カーボン)を大幅に削減し、2030年までのバリューチェーン全体でのネットゼロ(排出量実質ゼロ)達成を加速させる狙い。
データセンターは、メタのサービスを支える巨大なインフラだが、その建設と運用には大量のエネルギーと資材を必要とする。同社はこれまで、低炭素コンクリートの導入などを進めてきたが、今回、木材という新たな選択肢を加えた。
「マス・ティンバー」は、複数の木材を接着して強度を高めたエンジニアリングウッドで、高層ビルにも使用できる耐久性を持つ。メタによると、この木材を管理棟の建設に採用したところ、代替した建材部分のエンボディド・カーボンを約41%削減できる見込みだという。
最初の試験導入は、米サウスカロライナ州のデータセンターで実施。今後はワイオミング州やアラバマ州の拠点にも展開し、将来的にはサーバーを収容する中核施設「データホール」への適用も視野に入れている。
木材の活用には、CO₂削減以外にも利点がある。
- 工期の短縮: 部材の多くが工場で事前加工されるため、現場での溶接作業などが減り、数週間の工期短縮が見込める。
- 基礎工事の削減: 鉄骨に比べて軽量なため、建物を支えるコンクリート基礎の量を最大で半減できる場合があり、さらなるコストと排出量の削減に繋がる。
- 労働環境の改善: 木材を内装に活かした「バイオフィリック・デザイン」は、従業員のストレスを軽減し、生産性を向上させる効果も報告されている。
一方で、森林伐採による環境への影響も懸念されるが、メタは第三者機関による監査を義務付け、木材が責任をもって管理された森林から調達されていることを保証する方針だ。気候変動対策に配慮した林業(クライメート・スマート・フォレストリー)に取り組む供給者を優先するとしている。
巨大IT企業がデータセンター建設で木材利用を本格化させる動きは、建設業界全体の脱炭素化を促すモデルケースとなる可能性があり、今後の動向が注目される。
(原文)Meta pilots mass timber for more sustainable data center construction
(日本語参考訳)Meta、より持続可能なデータセンター建設のためにマスティンバーを試験導入