英会計士協会、SFDRの簡素化と柔軟な適用を要請

6月9日、国際的な会計士団体である英国勅許公認会計士会(ACCA)は、欧州連合(EU)のサステナブルファイナンス開示規則(SFDR)が企業の持続可能な実務の妨げとなっているとして、制度の簡素化と実施負担の軽減を欧州委員会(EC)に要請したと発表した。ACCAは、持続可能な未来への移行に必要な民間資金の呼び込みには、企業の報告負担を減らし、移行段階に応じた柔軟な適用が不可欠であると強調する。

SFDRは本来、金融市場参加者に対し、ESG特性やサスティナビリティに関する投資情報の透明性を高め、投資家の説明責任を強化し、投資判断へのESG統合を促すことを目的としている。ACCAもこの理念には賛同しているが、現状では要件が過度に複雑化され、制度本来の目的達成が阻まれると警鐘を鳴らす。

具体的には、膨大なデータ収集要件が投資家のコストを押し上げ、一部の金融商品が投資対象から外される懸念があるほか、執行体制の不備により規則の実効性が損なわれているとなどと指摘している。中小規模の運用会社がリソース不足で制度適用から排除されている現状や、社会的要素に過度な比重が置かれている点についても是正を求めている。

また、「重大な損害を与えない(DNSH)」原則の不明瞭さにも言及している。短期的な財務パフォーマンスの優先が、社会的リスクや非財務的価値の軽視につながることを懸念し、指針の明確化が必要だとした。

ACCAの地域政策責任者であるジョー・フィッツシモンズは、ECがグリーンウォッシング対策としてSFDRを先行導入した立場を活かし、今回の見直しをグローバルな制度整備の主導機会とすべきだと述べた。サステナブルファイナンスを真に機能させるため、EUには制度の現実的運用と国際的な規範形成の両立が求められている。

(原文)European Union sustainable financial disclosure rules hindering business practices
(日本語参考訳)欧州連合の持続可能な財務情報開示規則がビジネス慣行を妨げている

関連記事

おすすめ記事

  1. 【最新】TISFDとは?概要・指標から国内外基準との関連まで徹底解説

    2025-9-11

    【最新】TISFDとは?概要・指標から国内外基準との関連まで徹底解説

    気候変動や自然資本など、環境領域に関する開示が進みつつある中、次なるテーマは「社会」の領域。TIS…
  2. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(前編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…
  3. 2025-8-14

    特別対談:TISFD運営委員・木村武氏 × シェルパCSuO中久保菜穂 「サステナビリティ情報開示の新潮流:TISFDが示す設計思想と、日本企業の対応意義を問う」(後編)

    本記事は、ESG Journal を運営するシェルパ・アンド・カンパニー株式会社のCSuOが、サス…

ピックアップ記事

  1. 2025-11-12

    EU加盟27カ国、2040年温室効果ガス削減目標で合意 

    11月5日、欧州連合(EU)の27加盟国は、2040年までに温室効果ガス(GHG)排出を1990年…
  2. 2025年・COP30開幕!サステナビリティ経営・実務における注目テーマ整理/実務への影響解説

    2025-11-11

    2025年・COP30開幕!サステナビリティ経営・実務における注目テーマ整理/実務への影響解説

    11月10日から21日まで、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の第30回締約国会議(COP30)…
  3. 【PR】11/27   CSAを通じたESG活動の進化 ~評価視点と企業価値向上の実践アプローチ

    2025-11-11

    【PR】11/27 CSAを通じたESG活動の進化 ~評価視点と企業価値向上の実践アプローチ

    S&Pグローバル x ANAホールディングス 対談 概要 テーマ:C…

““登録01へのリンク"

ページ上部へ戻る