環境デュー・ディリジェンスをどう進める? 既存の取組を活かす実務のポイント

近年、EUの企業サステナビリティ・デュー・ディリジェンス指令(CSDDD)などを背景に環境デュー・ディリジェンスへの関心が高まっている。日本企業でも、環境方針やサプライヤー行動規範などに環境への配慮を盛り込み、EMSやCSR調達などを通じて環境課題に対応してきた企業は多い。
一方で、環境デュー・ディリジェンス(環境DD)に取り組むには「具体的に何を調べればよいのか」「サプライヤーをどこまで確認すればよいのか」「新たな管理体制を作る必要があるのか」と考える場合があるだろう。
本稿では、環境DDの基本と導入初期の企業がどこから実務に落とし込めばよいのかを整理しつつ、実践ステップから既存の取り組みとの活用について解説する。
環境デュー・ディリジェンスとは何か
2011年に国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が承認されて以降、企業活動に伴う負の影響を特定し、防止・軽減していくデュー・ディリジェンス(DD)の考え方が広がってきた。近年では、人権だけでなく環境についても、規制や情報開示の双方から対応の重要性が高まっている。
環境デュー・ディリジェンス(環境DD)とは、子会社や取引先などを含むバリューチェーンにおいて、自社の事業、製品、サービスと関連する実際または潜在的な環境への負の影響を特定し、評価し、必要な対応を行うものであり、重要なものから改善につなげていく継続的な管理プロセスである。
環境デュー・ディリジェンスで評価するリスクとは
通常のリスク管理では、「水不足によって工場が停止する」「環境規制によって調達コストが上昇する」といった自社への影響を考えることが多い。
一方、環境DDでは、自社の活動やバリューチェーンが環境にどのような負の影響を与えているかをリスクとして捉える。特に、事業活動への影響・リスクではなく、環境に対する影響・リスクを特定・評価する点に注意が必要としている(環境省資料より)。
なお、対象となる環境課題も、気候変動だけではない。水質・大気・土壌汚染、水資源の過剰利用、生物多様性の損失、森林破壊、化学物質、廃棄物など幅広い。
環境デュー・ディリジェンスの実践とは
環境DDという言葉を聞くと新しい取り組みをさらに追加する必要があるように思われるが、すでに環境方針を策定し、ISO14001などの環境マネジメントシステム(EMS)を運用し、環境法令の管理やサプライヤーへのCSR調達調査を実施している企業も多く、活用できる場合があるだろう。まずはこうした既存の仕組みや情報を環境DDに活用できないかを確認することが現実的である。
なお、環境省の調査(2025年4月実施)では、環境関連の全般的な方針を定めている企業は約8割であるのに対し、環境DDのアプローチや実行プロセスまで方針に規定している企業は約1~2割にとどまった。
環境DDでは、方針を策定することも重要であるが、その方針を使って負の影響を特定し、優先順位を決め、対応し、その結果を次の判断につなげることを求めている。
人権デュー・ディリジェンスの仕組みを活用
人権と環境への負の影響は関連していることがしばしば見受けられる。たとえば、水・大気・土壌の汚染や過剰な水利用などは、環境への影響だけでなく、地域住民の健康や安全、水へのアクセスといった人権への負の影響にもつながり得るためだ。環境省の調査(2025年4月実施)でも、人権DDと環境DDを完全に独立して実施すると、企業だけでなくサプライヤーなどの負担が増えるほか、両者の相関を見落とす可能性があるとして、部署横断的に取り組む重要性を指摘している。
すでに人権DDに取り組んでいる企業では、サプライチェーンの把握やリスク評価、サプライヤー調査、是正・モニタリングなど、既存のプロセスに環境の観点を組み込めないかを確認することも、環境DDを進める一つの方法となるだろう。
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どのような企業が環境デュー・ディリジェンスの必要性が高いのか
環境DDは特定業種だけの問題ではないものの、優先的に実務を整理しておいた方がよい場合がありそれにはいくつか次のような特徴がある。
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続きでは、環境DDを実務に落とし込むための具体的な進め方を解説します。
・環境DDへの対応を早めに検討したい企業の特徴
・環境への負の影響・リスクを把握するための最初のステップ
・人権DD・EMS・CSR調達など、既存の取組を活かす考え方
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<執筆者>

竹内愛子
国際関係学に関する修士号を取得。総合コンサルティングファームにて、システムおよび戦略コンサルティングに従事した後、Big4ファームのアドバイザリー部門にて、ガバナンス・リスクマネジメントや統合報告に関する企業向け支援に携わる。
2022年より ESG Journal にて、サステナビリティ経営の観点から、情報開示実務やそれを支えるシステム活用をテーマに、オリジナル解説およびホワイトペーパーの執筆を行っている。

