「回収して終わり」にしない資源循環、 青山商事「WEAR SHiFT」に見る、本業とつながるサステナビリティ

本記事は、ESG Journal編集部が、不定期にサステナビリティ経営の最前線の情報をインタビュー形式でお届けするインタビュー記事です。
サステナビリティ経営が広がるなか、環境・社会課題への対応を、本業とどのようにつなげていくかが企業にとって重要なテーマです。青山商事株式会社では、不要になった衣類を店頭で回収し、その先のリユース・リサイクルにつなげる「WEAR SHiFT(ウエアシフト)」を推進しています。
特徴的なのは、衣類を「回収して終わり」にせず、その先でどのように役立っているのかを見える化するとともに、商品づくりや従業員の意識醸成など、本業との接点を広げようとしている点。本記事では、WEAR SHiFTの取り組みと成果や課題とともに、サステナビリティの取り組みを本業につなげていくための考え方についても紹介します。
※本記事は、公開情報をもとにESG Journal編集部が独自に解説。記事の後半では、同社広報部長のコメントも紹介します。
| 青山商事のWEAR SHiFTとは
アパレル産業は、環境負荷への影響が大きいとされる業界の一つだ。不要衣類の回収窓口が広がるなか、青山商事株式会社は、回収した衣類が「その先」でどう役立っているかを見える化することを重視している。
WEAR SHiFTは、「終わらない服をつくろう。」を掲げ、店頭で不要衣類を回収してリユース・リサイクルにつなげる取り組みだ。1998年に始めた下取りサービスを発展させたもので、2023年10月からは全国700以上の「洋服の青山」「スーツスクエア」の店舗にリサイクリングBOXを設置。同社の商品に限らず、他社で購入した衣類も1着から受け付けている。
回収した衣類は、提携する繊維リサイクル企業ファイバーシーディーエム株式会社の工場で選別され、古着としてのリユースや、素材としてのリサイクルに回される。回収ボックス自体も、廃繊維を原料とするリサイクル素材でつくられている。
参考:洋服の青山「服を変える服 WEAR SHiFT」、消費者庁「マイエシカル消費」青山商事株式会社
| 特徴的な取り組み:回収した衣類の『その先』を見える化
同社が重視しているのは、回収した衣類がその後どう役立っているかを、参加したお客様に伝えることだ。回収を起点に、主に3つの取り組みを展開している。
- 循環型の製品づくり:回収した衣類からつくったリサイクルウールを使い、スーツやコート、ニットなどを商品化して店舗で販売している。
- 防災毛布の寄贈:リサイクルウールで防災毛布をつくり、自治体に寄贈。寄贈先は、過去に大きな災害を経験した地域、物資が届きにくい離島や遠隔地、洋服の青山の店舗がある地域、といった点を判断基準にしている。
- 「AOYAMAの森」づくり:回収量に応じて一般社団法人more treesに寄付し、高知県梼原町で多様性のある森づくりを進めている。四万十川の源流域にあたる地域で、水資源の保全も目指している。
いずれも、お客様が不要な衣類を店舗に持ち込むことが起点になっており、参加者の行動が資源循環や環境保全につながる仕組みとして設計されている。
|青山商事のWEAR SHiFTの主な成果
- 回収量と再利用率:2024年度の回収量は約347トンで、その99%が再利用されている。
- 「ウエアシフトスーツ」の誕生:2024年11月、回収したスーツ由来のリサイクルウールを使った循環型スーツを発売。仕分けから紡績、仕上げまでを国内で一貫して行っている。
- 外部からの評価:1998年からの継続性と、全国の店舗から誰でも参加できる点が評価され、2024年に環境省主催の第12回グッドライフアワードで「環境大臣賞 優秀賞」を受賞した。
参考:洋服の青山「服を変える服 WEAR SHiFT」、消費者庁「マイエシカル消費」青山商事株式会社
|今後のチャレンジ
- 認知の拡大:同社は、こうした取り組みをしていることの認知がまだ高くないことを課題に挙げている。環境負荷の大きい産業の一員として取り組みを続け、より多くの人に知ってもらうことで、エシカル消費を広げていく考えだ。
- 何度でも循環できる衣料品へ:形を変えて何度も循環する「終わらない服」をつくることが、WEAR SHiFTの目的だ。同社は、何度でも循環できる衣料品は今はまだ実現していないとしつつ、その日に向けて取り組みを続けるとしている。
参考:洋服の青山「服を変える服 WEAR SHiFT」、消費者庁「マイエシカル消費」青山商事株式会社
|担当者の声:本業とつながってこそ「本当の推進」になる
青山商事では、サステナビリティの取り組みを社内外に発信する広報部が、WEAR SHiFTプロジェクトの事務局を務めている。同社広報部長の長澤英規氏に、取り組みへの思いを伺った。
長澤氏:WEAR SHiFTは、お客様と共に歩むエコ活動です。回収した衣類はスーツやジャケットに生まれ変わるだけでなく、防災毛布になったり、回収量に応じた寄付で、森づくり(AOYAMAの森)にもつながったりしています。
最近は、従業員をその森に連れて行って研修も行いました。自分たちの会社がこういう取り組みをしているんだと知ることが、従業員の誇りにもつながっていると感じています。
ただ、「何トン回収しています」というだけでは、経営層にはなかなか響きません。例えば、研修した従業員のモチベーションが上がり、お客様に自信を持って提案できるようになって、売上につながる。「環境に良い」だけでなく「本業にも効いている」と示せてはじめて、取り組みは本当の意味で前に進むのだと思います。
※コメントと写真は、SmartESG導入事例の取材時にいただいたものです。
>>SmartESG導入事例記事はこちら

右広報部長 長澤英規氏
|まとめ
WEAR SHiFTは、回収をゴールにせず、衣類の「その先」を製品や防災、森林保全へとつなげ、それを参加者に伝えている点に特徴がある。社会的な意義に加えて、従業員の誇りや売上への貢献といった本業の価値でも取り組みを語ろうとする姿勢は、サステナビリティの社内浸透を考えるうえで一つのヒントになるだろう。
編集:ESG Journal編集部
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